心を守るために大切なこと

人々は高齢になるにつれ、様々なものを失っていきます。
例えば長年勤めてきた会社を退職して社会から引退することは、仕事一筋だった人にとって大きな喪失体験となります。
また、配偶者や友人など大切な人の死は、心に大きなダメージを与えてしまうのです。
さらに、高齢者は身体の衰えに対してもデリケートです。

感覚・知覚機能の低下は、これまでの人生で楽しめてきた趣味に制限を与える可能性があります。
身体機能の低下や慢性疾患などでは、旅行や外出など外の世界との関わりが薄まることや、思うようにできないことへの葛藤が生まれやすくなるのです。

こうした喪失体験によって、高齢者の心はとても脆くなっています。
些細なことがきっかけで落ち込みやすくなるため、介護の場面では配慮が求められます。

ここでやってはいけないのが、高齢者を責めることです。
介護者側は責めているつもりがなくても、高齢者にとっては大きなダメージになっている場合があります。

例えば動作が鈍くて作業が遅れてしまった時、「もっときびきび動いてください」などと急かすのはもってのほかです。
前述したように、高齢になるにつれて身体機能が低下するため、本人ももどかしい気持ちは一緒なのです。
何気なく言った言葉で傷つくリスクがあるので、言葉選びや態度には十分気を付けましょう。

高齢者の心を守るために大切なのは、ありのままの姿を受け入れてあげることです。
動作が遅くても、言葉を上手く話せなくても、本人は一生懸命頑張っています。
本人を尊重して、適切な介護を行いましょう。